「俺だって七瀬といたいし……正直、このまま部屋に呼んでもいいかなとか考えてた」
「えっ……」
「……でも、我慢してんの」
「我慢……?」
「そ。不誠実な男だって思われたくないんだよ。七瀬が大好きなご両親に」
かぁぁと頬が赤く染まっていくのを感じながら、私はスッと目線を逸らした。
「……ばか」
「ばかでいいよ」
なによそれ。
本当はまだ一緒にいたかったとか。
それを我慢してただけとか。
そんなこと言われたら、顔が緩んじゃう。
「わかった。……今日は帰る」
「ん」
「でも、一つだけ……」
これだけは、どうしても譲れない。
何度言われたって、何度聞いたって、足りないから。



