「あのな……」 「なによ、瑛大は私といたくないの?」 「……そういうわけじゃないから」 わかってる。 どうせ、遅くなりすぎたら親が心配するだろとか。明日学校なんだからとか。そういういつもの優しさなんでしょ? そんなの、私はいいのに。 優しくなんて、しないでいいのに……。 不貞腐れて俯いたまま動かないでいると、 「顔見せて」 耳元に落ちた声。 僅かに抵抗を残しつつもチラリと顔を上げた矢先、大きな手のひらが私の左の頬を包み込んだ。