優しくしないで、好きって言って


「そうかなあ?」

「うん。……実はね、お姉さんも昔、この髪の色が変だなーって思ってたんだ」

「うそ! めちゃくちゃきれいなのに」

「ふふ、ありがとう。……でもね、今はとっても好きになれたの」


 ゆあちゃんはまんまるに目を見開いた後、小さい手でスカートをキュッと掴み、うつむき加減で私を見上げた。


「……わたしも、好きになれるかなぁ」

「きっとなれる。だって、そんなに素敵なんだもの」

「ゆあー! ゆあー!」

「あ、ママだ!」


 遠くから呼ぶ声に気づいたらしいゆあちゃんが、パッと明るく声を飛ばした。


「お姉ちゃんまたね」


 そう言ってぱたぱたと駆けていくその後ろ姿を、そっと見送る。