優しくしないで、好きって言って


 なんだか情けなくなってきた。

 期待してた自分が悪いだけ、なのに。


「……っ」


 これ以上耐えられそうになくて、ぐっと拳を握りしめる。

 そうしてそのまま逃げ出そうとした──その時。


「っ、七瀬危ない!」


 ──えっ……?


 と思った瞬間、グイッと思い切り腕を引っ張られ、真っ暗闇に包まれた。

 一瞬、なにが起こったのかわからなかった。


「大丈夫?」


 頭上から降ってきた声に顔を上げる。

 すると、心配そうな瞳とぶつかって──どきんっと心臓が跳ねるとともに、止まっていた思考が一気に動き出した。


 今こうやって私を支えてくれている瑛大に、少し向こうに見える自転車の人。

 そっか──。

 答えは、すぐに導き出された。