優しくしないで、好きって言って


「親父には反対されてるけど、これだけは譲らないって決めた。何を言われても、絶対になってみせる。……いずれ、親父にも認めてもらえるように頑張るから」

「……」


 俺が全てを言い切っても、母さんは黙ったままだった。

 実際にはどうだったかわからないが、俺にとっては10分にも感じる沈黙だった。

 長い長い、静寂の時。


「……そう。それがあなたの意志なのね」


 それを破った声は、小さく震えているように聞こえた。

 目に映るその人は薄らと笑みを浮かべ、同時に何かを堪えるように眉根(まゆね)を寄せていた。


「あの人はね、自分のような思いをあなたにしてほしくなかったのよ」

「……?」