優しくしないで、好きって言って


 ……やっぱ、この人はすげぇや。

 隠し事なんか、昔から絶対できねぇもんな。

 七瀬と初めて話したあの日も、『何かいいことでもあった?』ってすぐに見抜かれた時は、正直どこかで見られてたのかと疑うくらいだった。


 そして、

『お前は医者にならないほうがいい』

 そう親父に言われた時も、どうしたのって心配してくれた。


 そんなことを思い出し、ふっと笑みを零した俺は、表情を引き締めるや否や真っ直ぐに母さんの目を見据えた。


 あの時は〝なんでもない〟ってごまかしてしまったけど。


「……俺、やっぱり医者になるよ。医者になって、立派に自立して、七瀬や母さんたちを守れるようになりたいんだ」


 今言うしかないと言わんばかりに込み上げてきた想いを、一直線に解き放つ。