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『俺、もうすぐ引っ越すんだ』
8年前、そう告げた俺は、七瀬に言った通り一世一代の告白をした。
『また会えたら、今度こそ七瀬から離れないから。ずっと俺の傍にいてほしい』
その時妙に照れて反応は確認できなかったが、七瀬も俺と同じ気持ちだって、信じて疑わなかった。
だって、七瀬は俺と会話する時いつも頬を赤らめながらこっちを見てくるんだ。
そんなの、そう思わない方がおかしい。
だから数合わせのために参加した合コンで七瀬を見かけた時は、目を疑った。
なんでここにいんの?
──俺が、いるのに。
そんなことを考えて、イライラしてしまったのかもしれない。
会えて嬉しかったはずなのに、苛立ちのせいで話しかけることもできなかった。
思いの外、冷たく当たってしまった。
でもそれだけならまだよかった。
そういうこともあるだろうって、割り切ることもできた。
──決定打は、婚約の顔合わせをしたあの日。



