優しくしないで、好きって言って


 わかってしまった。

 なんで私が、大事なはずのそのことを覚えていなかったのか……。


「ん、どうした?」

「あのね、瑛大。私、覚えてなかったんじゃなくて……聞いてなかったみたい」

「は?」


 私の口から飛び出した突飛なそれに、当然の如く顔を顰める瑛大。

 私はちゃんと伝えたくて、必死で言葉を重ねる。


「違うのよ、なんていうか……。瑛大が引っ越すって聞いて、すごくショックで、放心状態になっちゃったみたいで。そこからの記憶が曖昧なの」


 瑛大が引っ越すという事実は、私には人生が終わったも同然の出来事だったんだ。

 それで……。