優しくしないで、好きって言って


「私、約束がなんなのか思い出せなくて。瑛大に言われたあの日から、ずっと考えてたの……っ」


 だめだ、喉が熱くて、上手く喋れない。

 涙が、零れそうになる。

 だけど〝言わなきゃ〟──その想いだけでなんとか声帯を震わせる。


「でも、やっぱりいくら考えても、思い出せなくて……っ」

「な、なせ……」

「瑛大が怒るのも当然だと思う。でも、これだけは言わせてほしい」


 許してもらえるかなんてわからない。

 自分勝手だって、呆れられるかもしれない。


 でも──。


「……っ、悲しい思いをさせて、ごめんなさい……っ!」


 全身全霊の想いを込めて頭を下げた。


 ずっと会いたかった。ずっとずっと大好きだった。

 そんな中、夢にまで見たあなたとの再会。


 初めは信じられなくて、戸惑って、突き放したりもした。

 好きだからとか、好きじゃないからとか。

 人のせいにしてごまかし続けてた。


 一番大事なのは、誰かじゃなく自分の気持ちなのにね。


 そうやってたくさん間違えながら、私はようやくそんな簡単なことに気づけたんだ。

 素直になることの幸せを、知れたんだ。


 だけど今はまだ、想いの欠片すらぶつけられていないじゃない。


 なのに──。


「……本当に、ごめん、な……さいっ」


 ──なのに、このまま全部失くなっちゃうなんて、絶対やだよ……っ!


 ぎゅっ。

 瞼に力を込める。


 次の瞬間──耳に届いた声は、私の予期せぬものだった。