優しくしないで、好きって言って


「えっとその……瑛大、もう帰ってたんだね」


 違う。

 言いたいことはそうじゃない。

 なのにテンパってか、言葉が思うように操れない。


「……まあ、中間前だしな」

「そ、そう」


 言いながら逸れてしまった目。

 突如、堰き止めていたはずの恐怖心が心を取り巻き、私をその場から動けなくした。


 ──ドクン、ドクン。


 声が出ない。

 足も震えてる。


 あれだけ自信あったのにな。

 やっぱり、怖いんだ。

 瑛大が今どんな顔してるのかとか、今何を思ってるのかとか。

 全部を、この目で耳で知ってしまうのが。


 だけど……。


「とりあえず、中入る? なんか用があって──」

「待って!」


 くるりと向いた背中。

 私は拳を握りしめ、そう叫んだ。


 思いのほか大きく空に響いてしまった。

 けれどそんなのに構うことなく、勢いのままに、赴くままに、私は言葉を続けた。