優しくしないで、好きって言って


 ……そうよ。私だって、負けてられない。

 ぎゅっとカバンを抱きしめた私は、思うままに駆け出し、一直線に竜胆の車へと向かった。



「ごめん、竜胆。お願いなんだけど──」


 そうして連れてきてもらった建物の前。

 竜胆には先に帰っててもらった。

 ドキドキと拍数の上がる心臓で、私は一人、深呼吸をする。


 大丈夫、ちゃんとやれる。

 そう何度も心で唱えてから、


 ──ピンポーン。


 震える手を抑え、インターホンを鳴らした。

 もう、後戻りはできない。

 すると──。


「七瀬……?」


 中から出てきたその人は、見るからに驚いた顔をしていた。