優しくしないで、好きって言って


「ごめんごめん。……で、なにって?」

「テストも終わったことだし、パーっと遊びに行かない? って言ったんだけど……」


 ……そう。

 いつの間にか時は流れ、今日はテスト最終日を迎えていた。

 そして、今はその放課後。

 本来は晴れやかな気持ちでいるはずの心には、モヤモヤと渦のようなものが取り巻いている。


 あれから数日経っても全くといっていいほど思い出せない記憶と、いくら待っても鳴らない電話のせいだ。

 ここまでくるともう、予感が確信に変わってくる。


 もしかして、じゃない。

 瑛大はきっと、私のこと──。


「七瀬、何か悩み事?」

「……っ」


 さすがは実玖留、勘が鋭い。


「……まあ、ちょっとね?」


 濁すように答えると、目の前の彼女が「そっかあ」と、私の手を握った。


「いつでも相談乗るからね」

「実玖留……」


 実玖留はそれ以上何も訊かなかった。

 けれどそれが、私には心地よく思えた。