優しくしないで、好きって言って


 8年前──瑛大から〝お別れ〟を告げられた、あの日。

 私たちは、いつものように二人でショッピングに出かけたりして、遊んでたんだ。

 その帰り道、瑛大がいきなり話したいことがあると言って寄った公園で、


『これ、七瀬にあげる』


 そんな言葉と共に、このテディベアをプレゼントされた。

 嬉しかった。瑛大からのプレゼントなんだもん。それに、とっても可愛くて。


『ありがとう』


 そう、私は喜びを噛み締めるように自然と呟いていた。

 そんな私に、瑛大の真剣な声が降ってきたんだ。


『俺の代わりに、七瀬を守ってくれるように願ったから』

『え……?』


 ただならぬ雰囲気を感じとった私は、揺れる瞳で瑛大を真っ直ぐに見つめ返す。

 するとおもむろに、キリッとした目が僅かに緩み、閉ざしていた口がゆっくりと開かれた。