──急に何? そう思いつつも、なんとか記憶を手繰り寄せてみる。 だけど、これといってピンとくるものは見つからなくて。 「……やっぱ、覚えてねーのな」 「ちょっと待って、それって……っ!?」 いつのことなのか教えてもらおうと思い──瞬間、声を呑み込んだ。 額にちゅ、と軽く触れた唇。 私は身を硬くして、その部分を両手で押さえた。 「願掛け」 「……な、んの」 「七瀬が思い出せるようにに決まってんじゃん」 ニッと歯を見せたその人は、くるりと踵を返し、顔だけこっちに向けた。