「七瀬がいなかったら、俺はずっと一人だった。だから、そんな七瀬を愛を持って育ててくれたあなたたちにも、俺は感謝してるんです」
「……瑛大くん」
私はそのやり取りを黙って聞く。
聞きながら、何故か痛くてたまらなくなった喉にそっと手をやった。
次の瞬間。
「だからこれからは許婚として、俺に七瀬のこと、守らせてください」
──サアァッ。
風が全身を吹き抜けていった。
「君になら、安心して任せられるよ」
***
「今日はありがとうね」
これから学校へ戻る瑛大を見送るため、私は瑛大と一緒に一旦パパの病室を出た。
気が動転していたせいで全く気づいてなかったけど、この病院は綾城家が経営しているあの綾城病院だったみたいで、すぐに車を手配してもらえることになったようだ。



