優しくしないで、好きって言って


 成績はトップが当たり前。運動だって、どの競技も卒なく熟してしまう。

 基本はクールな感じなのに、優しくて、人当たりが良くて、それでいて周りに流されない芯を持ってて。

 自分から騒いで目立つようなタイプではなかったけれど、男女関係なく自然と人を引き寄せる求心力みたいなものが瑛大にはあった。


 そんな中でも、私たちの関係は変わらなかった。

 ショッピングについてきてもらったり、一緒に映画を観に行ったり、たまに軽口を言い合ったり。

 今考えると、私は瑛大といるのがすごく心地よかったんだと思う。


 『瑛大、瑛大』


 って、何かにつけて絡んでたもんな。

 そんな私に瑛大は、いっつも優しく付き合ってくれた。


 私の中心にはいつも瑛大がいた。

 瑛大は、私の初恋の人だった。

 好きなのはきっと私だけ。でもそれでもいい。

 ただこれからもずっと、何気ない毎日の中で一緒に過ごせれば──。


 だけど小学3年になったある日、瑛大はいなくなったんだ。


 いわゆる引越し。ご両親の仕事の都合で、海外へ行ってしまった。

 あまりに突然だったから、酷く驚いたのを今でも覚えている。