「七瀬、悪いけど何か飲み物を買ってきてくれないか?」
「え、うん。いいけど」
私はパパから財布を受け取り、立ち上がる。
それと同じくして「ここは俺が」と瑛大が提案したけれど、パパはなぜかそれを許さなかった。
「いや、君はここにいてくれ」
そうして私は一人、自販機に向かうことになった。
……それにしても、パパ。思ったより元気そうでよかったな。
自然と微笑みを浮かべながら、丁寧に自販機に小銭を投入する。
パパにはお茶を、瑛大にはコーヒーを、そして私には紅茶を。
部屋を出る前に訊いておいたそれらを買い、予め持っていっていたエコバッグに入れる。
そして、元いた部屋の前まで戻ってきた時だった。
「瑛大くん、ありがとう」
そんな声が微かに聞こえて、扉にかけようと伸ばした手が反射的に止まった。



