「……っ!」 知らぬ間にぎゅっと握りしめていた拳が、突如として柔らかな温もりに包み込まれた。 驚いて振り向くと、そこにあったのは、優しくて、力強い、瑛大の顔。 黒く澄んだその目は、私をまっすぐに見つめていた。 瑛大は何も言わなかった。 ただしっかりと重ねられた手の温もりと、眼差しが、私の心に強く伝えてくる。 大丈夫だ、って。 七瀬は一人じゃないから、って。 不安で不安で堪らないのに……。 なんでだろう。すごく、安心する──……。