優しくしないで、好きって言って


『──あなたならきっと。何年隣で見てきたと思ってるんです』


 フッとその時、頭の中でまだ記憶に新しいそれが甦り、脳が揺れた。

 頬を殴られたような感覚だった。


 ──そうよ。ここで逃げちゃ、いつもと同じじゃない。


 変わるって決めた。

 変わりたいって、せっかく思えたんだから。


「私──」


 すっと息を吸って拳を握る。


「これから瑛大のところ行こうと思ってたんだからね」


 自分がどんな顔してるかなんてわからない。

 もしかしたら、必死で変な顔してるかもしれない。

 でも、関係ない。


「あと、吾妻さんの手当するとき私のこと無視したでしょう?」


 ただ私は、衝動のままに唇を動かし続ける。


「あれ、めちゃくちゃムカついたんだから」

「七瀬……」

「誰にでも優しいのが瑛大のいいところだってわかってる。でもね……」


 大丈夫。

 私なら、言える。