優しくしないで、好きって言って


「わかってる。これは俺の問題」

「……」


 やっぱり瑛大はまだ、勘違いしてるのかな。

 それで機嫌が悪くなって……。

 私が、いつまでも意地を張ってるから──。



「七瀬、俺のことだけ見てよ」


 ドクンッ──と心臓が大きく脈打った。

 途端に身体が火照ったように熱を帯び、じんわりと手に汗が滲む。


 ──どうしよう、私……。


 真っ直ぐにこちらを向く、婀娜(あだ)やかな瞳。

 見たことのないその表情に魅入ってしまっていると、私よりも大きな手が肩を包み込むように触れた。


「……だめ?」

「……っ」


 訊かれなくても、初めから答えなんて決まっている。

 あなたにだけ反応する心臓がその証拠。


 だけど私は、

 〝だめじゃない〟

 そんな短い言葉を吐くのが怖い。


 言いたいのに、なんで私はいつも──。