優しくしないで、好きって言って


「瑛大……?」


 表情の見えないその後ろ姿を見つめながら、私は促されるままに足を動かす。


「えっと、吾妻さんは?」

「手当終わって別れた」

「じゃあ持ち場は?」

「今休憩時間」


 ……どうしちゃったのよ。

 いつもより淡々と響く声に、苛立ちが滲むように感じるのは気のせいだろうか。


「悪い。痛かった?」


 暫く歩いたところで、ピタリと止まった足。

 強く握られていた手も、いつの間にか解放されている。


「や、大丈夫だけど」

「織山さんと来ると思ってたからさ、今日久栖さん来んの想定外だった」

「え? でもそれは──」