優しくしないで、好きって言って


「ねぇ、綾城くんは彼女いないの?」


 と、その時。突然繰り出された質問に、私の耳はぴくりと反応してしまった。


「いないけど」

「えー、いがーい!」


 ふーん……いないんだ。

 でもそうよね、こんな場所に来てるんだもん。そういう人がいたら普通来ないよね。

 なんて、頭の中でぶつぶつ唱えていると、おもむろに瑛大の右隣の影が動いた。


「でもよかった。綾城くん、絶対モテそうだもん」

「俺は全然。君たちの方こそじゃない?」

「「きゃーーっ」」

「もう、綾城くんったら〜」


 思わずぽかんとしてしまった。


 ……もしかして、女慣れしてる?

 私の中にいる綾城瑛大はそんなこと言わなかった。

 それを、あんなふうに自然な感じでさらっと言ってのけちゃうなんて。


 いや……たまに思わせぶりなことを無自覚でするようなやつだったけど。

 昔は、向けられた好意に全然気づかず思いっきりスルーしてたか、反応に困ってたかだったくせに……。


 あーもう、やだやだ。

 私は大きく首を振ると、心を落ち着かせるべく席を立つことにした。