『ねぇ、なんで私のお迎えはずっとママじゃないの?』
二人とも毎日仕事で忙しくて、お迎えの時間に間に合わないことも、代わりに部下の人が迎えに来てくれることも、よくあった。
だから、他の子が自分のパパやママと手を繋いで嬉しそうに帰っていく様子を見るのが辛かった。
……私はそう。ずっとずっと、淋しかったんだ。
私の言葉を聞いたママは、今までに見たことのない悲しそうな顔をしていた。
そして、声を震わせながらただ一言、『ごめんね』と私に謝った。
その晩──ふと眠りから覚め、お水を飲みにリビングへ向かおうとした私は、パパとママが二人で話しているのを聞いてしまったんだ。
やっぱり、どちらかが仕事を辞めようか──。
それが聞こえてきた瞬間、『辞めちゃダメ!』と叫んでいた。
だって、私のせいで大好きな二人が大好きなお仕事を辞めるなんて、どうしても嫌だったから。
『やあねママ。私がああ言ったのは、ただちょっとギモンに思っただけよ?』
そんな言葉でごまかして、この気持ちには蓋をするって決めたんだ。



