優しくしないで、好きって言って


 なによ仲良さそうにしちゃってさ。

 さっき私のこと思い切りスルーしたくせに、なんかムカつく。

 そうやって、苛立ちを込めた視線を送ってやった時だった。


「いいなあ」

「……ん?」

「私も綾城くんの許婚さんだったらよかったのに」


 ドクンッ。

 激しく心臓が動いた。


「それって──」

「さっき話してた人、許婚さん……なんだよね? すっごく可愛い人でびっくりしちゃった。それで私、焦っちゃって。そしたら、情けないけどこんなことに」

「……」

「あのね綾城くん。タイミング、おかしいかもしれないんだけど……」


 恥じらいを纏ったような熱っぽい視線が上目遣いに向く。

 そしてそれがピタリと一点を捕らえた時、彼女は一息に言ったんだ。


「私、綾城くんのことが好きなんだ」