優しくしないで、好きって言って


「綾城くんて、甘いもの好きなんだー」

「うん」

「じゃあじゃあ、私のも食べるー?」

「私のもー!」


 ……はーー、胸焼けしそう。


 ついさっき席替えをしたのはいいんだけれど、すぐ目の前でずっとこんな光景が繰り広げられてちゃ堪らない。

 実玖留とは席離れちゃったしさ。こういう場は得意じゃないのに、一人でどう過ごせばいいっていうのよ。


 そんな私の心なんて露知らず、普段より1オクターブくらい高い声できゃあきゃあと騒ぐ女の子たち。

 そしてその中心にいるのは、紛れもない彼──綾城瑛大。


 ……なによ、瑛大のやつ。

 たしかにかっこよ……前よりクールな雰囲気が増したというか、男らしくなったとは思うけど。

 満更でもなさそうなのがなんかムカつ……って!

 なんで私がムカついてるの。


 瑛大がモテるのは昔からだし、こんなのは見慣れている。

 それに、私と瑛大は別にそういう間柄でもなんでもなんでもないんだから……。