優しくしないで、好きって言って


「大丈夫か吾妻!」

歩夏(ほなつ)ちゃんどうしたの?」

「ううん、ちょっと鉄板に触れちゃっただけだから──」

「吾妻、見せて」

「……あ、綾城くん」

「これ、ちゃんと冷やした方がいいよ」


 ザワザワと心配の声が上がる中、落ち着いた様子で告げるなり、〝綾城くん〟が吾妻さんの手をパシッと掴んだ。


「ごめんみんな、吾妻連れてくな」


 早足になったその人が、私と竜胆の前を通っていく。

 そんな様子をぼんやり見守っている最中、バチッ──。

 確実に目と目が合ったと思ったのに。


「……っ」


 なぜかそのままなにもなかったように、瑛大はふいと向こうへ顔をやって通り過ぎていったんだ。