優しくしないで、好きって言って


「……は?」


 耳に届いた言葉を理解するのと同時、深町くんの口から気の抜けたような声が洩れた。

 きっと、私が瑛大の相手だとまでは知れ渡っていなかったんだろう。

 ぽかんとする顔がそれを物語っている。


「ねえ聞いた? あのお人形さんみたいな子、綾城くんの婚約者なんだって」

「わ、あれ地毛? 外人さんかな?」

「ハーフじゃない? 日本語上手だったし」

「残念、クォーターだよ」


 ──え。


「美人だろ、俺の婚約者」

「「きゃーーーっ!」」


 その瞬間、悲鳴のような声が大きく湧き上がった。

 ざわざわと周囲が騒がしくなる中、私は未だ私の肩を抱くその人を恐る恐る見上げた。

 すると、いつも通りのクールな顔が目に入って──。


「……っちょ、ちょっと」

「ん?」

「なんで勝手にそんなこと」


 気づけば、口が喋っていた。