「じゃ、そろそろ行きましょう?」
「そうですね」
「……あ、ちょっと待って」
その前に一つ、忠告しておかなくっちゃ。
「さっき〝お嬢様〟って言ってたけど、今日は絶対禁止だからね」
自分で言うのはなんだけど、クォーターの私はその場にいるだけでもよく目立つ。
腰まで届くミルクティーブラウンの髪に、ヘーゼルの瞳なんて、そうそういるものじゃない。
加えて〝お嬢様〟だなんて呼ばれたら、言わずもがな。竜胆に変装してもらった意味がなくなってしまうもの。
「はいはい、七瀬さん。わかってますって」
「ならいいけど」
……最近はだいぶ〝七瀬さん〟率が高くなってきたと思ってたんだけどな。



