優しくしないで、好きって言って


 あのあと暫くの間、瑛大の顔を見れなくて大変だったんだ。

 様子がおかしい私を巴さんが心配してくれて……かと言って訳を話すわけにはいかないしで、どうしていいかわからず頭の中は大混乱。

 なのに張本人は素知らぬ顔で『大丈夫?』とか訊いてくるし。

 ほんと、誰のせいでこうなってると思ってるのよ! と言ってやりたい気分だった。


 ……まあ、カチンときたおかげで、今こうして平常心を取り戻せてるんだけどね?


 なんて思い起こしていると、


「ほら、あなたも」


 と、なにやら巴さんが隣の瑛大パパの背中を押した。


「七瀬さん、よければまた来てやってください」

「は、はい!」


 緊張して、少しぎこちなくなった声。

 だけどそんなことが気にならないくらい、私はその一言が嬉しかった。