「七瀬ちゃーん、瑛大ー!」
「……っ!」
もう食事の準備が整ったらしい。
「やっぱり、なんでもない!」
その時遠くの方から聞こえた声に、催眠術が解けたように冴え渡る脳。
と同時に、私は勢いよく立ち上がった。
「い、行くわよ」
目なんて当然、合わせられなかった。
***
「今日はありがとうね、七瀬ちゃん」
お料理を食べた後、巴さんたち3人が私を玄関までお見送りに来てくれた。
「いえ、こちらこそご馳走様でした。とっても美味しかったです」
私はそう言って、深々と頭を下げる。
味はもちろん、巴さんの作ってくれた料理は和食中心で栄養満点。さすがは医療関係者である人の料理だと感心せずにはいられないくらい、素敵なものだった。
ちゃんと味わえてよかったなぁ──。
そんなことを思ってしまうのは、間違いなく瑛大のせい。



