そう──。
最初は、パパとママに褒めてもらいたかったからだった。
忙しい二人にもっと私を見てほしくて、必死になって勉強した。
テストでいい点をとれば、いつもすごいねって頭を撫でてくれる。それが嬉しくて。
「私もやる」
瑛大が答えるよりも先に、私の身体は動いていた。
理屈なんかじゃ説明できない。
なんだかわからないけれど今、どうしてもそうせずにはいられなかった。
瑛大の隣に移動した私は膝立ちになり、そっと両手を伸ばす。
そして、自らの胸に抱き寄せてから、その頭を右手で優しく撫でた。
「瑛大、いつも頑張っててすごいね」
そう落とすと、瑛大がははっと笑って何かを言ったみたいだったけど、私にはよく聞こえなかった。
ただママとパパがしてくれたように、見よう見まねで私は何度もその頭を撫でる。
こうされるのが、昔から堪らなく好きだった。
暗闇に小さな蝋燭が灯ったように、淋しさが和らぐから。
私はママとパパに愛されてるんだって、心ごと実感できるから。



