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「その辺適当に座って」
「うん」
瑛大のパパとの挨拶を済ませ、肩の力が抜けるのを感じたのも、束の間だった。
短く返事した私は、ドキドキと鼓動を高鳴らせながらテーブルの前のラグに座る。
シンプルなデザインかつモノトーンに揃えられ、たくさんの本が並んでいること以外は全体的にスッキリとした部屋。
今私がいるここは紛れもない、瑛大の自室だ。
この前瑛大を家に泊めたお礼にと、今日は巴さんが私にお料理を振舞ってくれることになっていたんだけれど。
『七瀬ちゃん、申し訳ないんだけどお料理あともう少しかかりそうなの。出来るまで瑛ちゃんのお部屋で待っててくれるかしら?』
というわけで、心の準備もままならず、流れのままにここに来ることになった私は現在、そわそわの真っ只中なのだ。



