優しくしないで、好きって言って


「七瀬来て。親父には俺から紹介するから」

「う、うん……」


 なんだか急に心拍数が上がってきた。

 瑛大のパパに会うのは、これが初めてなんだもの。


「親父、この人が新条七瀬さん」

「初めまして。新条七瀬と申します」


 私は瑛大に続くようにそう言うや否や、深々と頭を下げた。

 そうして顔を上げた時、レンズ越しに目と目がバッチリと合って。


「七瀬さん」

「はい!」


 いきなりお腹に響くような低い声で呼ばれ、びっくりして声が少し上擦ってしまった。


「話は聞いている。よろしく頼む」

「よ、よろしくお願いします!」

「ちょっと匡一郎(きょういちろう)さん! 七瀬ちゃんが怖がってるじゃない」

「いえ、そんな……!」


 巴さんの少し怒った口調のそれに、私は反射的にそう答えていた。