優しくしないで、好きって言って


「そっかぁ、もっとアプローチしなきゃ好きだなんて伝わらないよね」

「実玖留……」

「私、頑張る!」


 よし、と拳を握る姿に、私の胸はじーんと熱くなる。

 と、その時。



「七瀬も頑張ろ!」

「……わ、私も?」


 力強い2つの手が勢いよく左手を包み込んできて、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「そうよ! だって七瀬、ほんとは綾城くんのこと好きなんでしょう?」

「……っ」


 真っ直ぐな目にゴクリと喉が鳴る。

 
「好きならもっとアプローチしなきゃ! それで逆に好きになってもらうのよ!」

「逆にって……」

「ね?」

「……は、はは」


 アプローチ、か……。

 そんなこと今まで考えたこともなかったな──。