優しくしないで、好きって言って


「……私、さっきの化粧室にハンカチ忘れちゃったかも」

「え!?」

「ごめん、取りに行ってくる」

「じゃあ私も──」

「俺が行く。元輝と織山さんは先行ってて」


 瑛大……。


「ありがとう」



 そうして瑛大についてきてもらい、元来た道を辿ることになった私は、化粧室に戻ってきてすぐメイク直しをした鏡へと直行した。


「よかった……」


 ちゃんとそこにあったそれ。

 よく探さずとも見つけられたことに、ほっと安堵のため息を吐く。


 ……よし。

 今度はしっかりとカバンのポケットにしまったことを確認すると、私は急いで外へと足を向かわせた。


 まさか自分が忘れ物をするとはね。こんなの久々で、正直ちょっと焦ってしまった。

 そんなことを考えながら化粧室を出た私は、えーと……と辺りを見回す。


 瑛大どこだろう? この辺で待ってるって……。


「あっ」


 ──瑛大!


「……っ」


 呼ぼうとした声は直前で喉を下りていって。

 代わりにドクン、と心臓が大きく音を立てた。