「人のことばっかじゃなくてさ、俺たちも楽しもうよ」
向けられた相変わらずクールなその眼差しに、私は自ずと瞬きを速くする。
「……っそ、そうね!」
「せっかく七瀬から誘ってくれたデートなんだし」
「で、デート?」
この人はいきなり何を言い出すのか。
それも、なんの恥じらいもなくなのだから恐ろしい。
「……違う?」
「やっ、こ、これは」
「んー?」
「とにかく、今日は実玖留のために誘っただけで──」
変に早口になってしまう。そんな私に次に落とされたのは。
「じゃあ、今度は二人きりで来ような?」
そんな、甘く余裕のある囁きだった。



