優しくしないで、好きって言って



 今も周りを見渡せば、当たり前のように家族連れのお客さんたちがいる。

 でもそれは、瑛大や私にとっては特別なことだった。

 だから、こういう光景を見ると羨ましいなぁなんて、未だにちょっと思ってしまう。


「って、あれ?」


 視線を水槽へ戻そうとしたところで、ふと気がついた。

 そういえば、実玖留たちは──。


「元輝たちなら、あっちだよ」

「本当だ」


 見ると、二人はクラゲコーナーでなにやら楽しそうに笑っている。


「案外打ち解けてるみたいだな」

「うん……」


 小さく頷いて、私は唇の端を結んだ。

 さっきはどうなることやらと思ったけど、結構いい感じ?


「なあ」

「へっ」


 振り向けば、視界を占領するドアップの顔。