優しくしないで、好きって言って


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「わぁ、すごーい」


 大きな水槽に泳ぐたくさんの魚たちを前に、私は堪らず感嘆の声を洩らした。


 小学生ぶりの水族館。しかも、初めて来る場所。

 目に映るものがどれも新鮮に見えて、心臓の高鳴りを抑えきれない。


「綺麗だな」

「……っ、そうね」


 びっくりした。

 いきなり瑛大に声をかけられたんだもの。

 泳ぐ視線が地面に落ちたその時、いつの間にか隣にいたその人が小さく声を響かせた。


「俺、こういうとこ来るの初めてだわ」

「え、そうなの?」

「まあね」


 ……そっか。

 そう思うとともに、私は瑛大の両親がいつも仕事で忙しいことを思い出した。