優しくしないで、好きって言って


「七瀬、おはよう!」

「実玖留! おはよう」


 耳慣れた声に振り向くと、私の待ち人がにこやかな表情で黒髪を揺らしながら駆け寄ってきた。

 爽やかな白のワンピース。その上からふんわりとした大きめサイズのカーディガンをまとった彼女は、清楚で愛らしい雰囲気がいつも以上に溢れている。


 そう──私が待っていたのは、実玖留。これから二人で、水族館に向かうのだ。


 水族館へは、ここからバスに乗って行くのが一番近いらしい。

 ということで早速私たちはバスに乗り込み、目的地まで向かい始めた。



「今日は本当にありがとうね」

「いいのよ。それより、頑張ってね実玖留」

「うん! でもちょっと、緊張しちゃうなぁ」


 いつもは堂々としてる実玖留のこんな姿は、滅多に見られるものじゃない。

 ……だけど、それも当然よね。

 だって私たちは今から、とある作戦を決行しようとしているのだから。