「言っとくけど、竜胆のことは本当になんとも思ってないからね」
「はいはい」
「……もう」
空返事をする瑛大に、私はやれやれとため息をつく。
『あれが七瀬の好きな人?』
昨日そう言い出した時はほんとびっくりしたけど。
〝わかってない〟のは瑛大の方よ。
だって、どう考えても私が好きなのは──。
「……っ」
ふとそこまで出かけて、ピタッと思考が止まった。
……あれ、私今──?
「じゃあ七瀬、また連絡──」
「ちょっと待って」
不意に伸びた手。
「七瀬……?」
気づけば私は、瑛大の腕をぎゅっと掴んでいた。
不思議そうにな瞳に覗き込まれ、はっと現状を理解する。
「えっと……」



