優しくしないで、好きって言って


***



「じゃあ、またね」


 着替えを済ませた私は、もう帰るという瑛大を玄関で見送ることになった。

 パパとママは早朝からお仕事ということで、私一人でのお見送りだ。


「七瀬、しばらく安静だからな」

「はーい。わかってるって」


 さっきから、あなたに何度も言われてるんだから。

 そういうところ、ほんとあの頃と一緒。

 ふっと口角の上がってしまう私に、瑛大はまだ言いたいことがあるらしい。


「それと、寿々香さんたちにもよろしく伝えておいてくれる?」

「うん」


 ふわり、浮かんだ笑みに頷く。

 すると瑛大はくるりと背中を向け──。


「……それから、久栖さんにも」


 何故か再びこちらを向いた。


「竜胆……?」


 ……って、もしかして。

 意図は簡単にわかった。