数日後、私、藤堂くん、詩穂、一ノ瀬くんの四人で春宮さん、財前さん、原田くんへのいじめの証拠を先生達に提出した。
また、財前さんが弁護士を呼んだ。それらのお陰でいじめ首謀者の西島さんや男子生徒達が炙り出され、見事に停学処分になった。
担任の先生も、西島さんを一方的に信じて財前さんを責めたことを謝ってくれた。
「苺谷さん、桐山さん、色々とありがとね」
「本当にこのご恩は忘れませんわ」
春宮さんと財前さんは嬉しそうだった。
「お礼を言われる程のことじゃないよ」
「姫花も私も人として当たり前のことをしただけだから」
面と向かってお礼を言われると何だか照れてしまう。
「麗奈も、ボイスレコーダーや弁護士呼んでくれたお陰で助かった」
「私はそんな」
春宮さんと財前さんの仲も以前より良くなっている気がした。
それに、彼女達二人は気が強い部分はあるけれど基本的に素直で良い子だった。
漫画のキャラとして見ていた自分が恥ずかしくなるくらいだ。
もっと早く彼女達と話していれば良かったかもと思ってしまった。
「苺谷さん、そっちも解決した?」
そこへ藤堂くんがやって来る。
一ノ瀬くんと原田くんもいる。
「うん。藤堂くん達は?」
「こっちもバッチリ」
藤堂くんはニッとはを見せて笑った。その笑顔はやはり爽やかである。
「良かった」
私はホッと安心する。
すると、原田くんが前に出て来る。
「その、春宮も財前も、色々と迷惑かけてごめん」
原田くんは春宮さんと財前さんに謝った。
「別に、もう良いよ」
「私もですわ」
三人のわだかまりは解けていたようだ。
ようやく全てが解決した。
「それとさ、苺谷、この後少し話せる?」
原田くんは恐る恐る私にそう聞いてきた。
今までの自分勝手な様子は感じられない。
私は頷く。
「うん、良いよ」
◇◇◇◇
中庭で、私は原田くんと二人きりになった。
「苺谷、本当に今まで色々とごめん。迷惑かけた」
原田くんはそう頭を下げた。
「うん、もう良いから」
「……俺さ、確かに調子に乗ってたかも。春宮と財前みたいな子に囲まれて、何か俺イケてるかもって。俺の時代が来たかもって。でも、周りに迷惑ばっかかけてたことにようやく気付いた」
原田くんは真摯で真っ直ぐな様子だった。
「原田くん、変わったね」
「ああ。目が覚めた。それでさ、俺、一学期が終わったらこの学校辞めることにした」
「え……?」
突然の情報に私は驚いてしまう。
ここはもう『俺バラ』とは違う世界だけど、『俺バラ』にこんな展開あったっけ?
「実は父さんが海外赴任することになって、俺もついて行くことにした」
「あ……」
そこで私は『俺バラ』の展開を思い出した。確かに私が読んでいた時、原田くんの父親が海外赴任になって転校になりそうなエピソードがあった。確かそれをヒロイン達が止めた気がする。そこで何とか原田くんの父親だけ単身赴任になる結末だった気がする。
「今までダメダメだったけど、俺、向こうで鍛え直そうと思う」
原田くんは覚悟を決めた表情だった。
だとしたら、私は背中を押すのみ。
「そっか。頑張ってね」
夏の風が中庭を吹き抜けた。
◇◇◇◇
それからは、本当の平穏が戻って来た。
私、藤堂くん、詩穂、一ノ瀬くんの四人は相変わらず。そこに時々春宮さんや財前さんが加わるようになった。
それから、私は詩穂、春宮さん、財前さんに碧先輩を紹介してみたりした。今では女子五人で集まって遊ぶこともある。と言っても、そろそろ期末テストがあるからほとんど勉強会になっているけれど。
その甲斐あって、期末テストは何と中間テストよりも点数が上がった。他のみんなも中間テストよりも順位が上がったみたい。良いことづくめだ。
そして、今日は終業式。明日から夏休みなので、一年二組の雰囲気は浮き足立っていた。
終業式が終わると、一気にみんな夏休みモードになった。遊びに行く予定を立てる子、勢い良く部活に向かう子など、様々だ。
「いよいよ夏休みだ」
藤堂くんは何かから解放されたような、晴れやかな表情だ。
「そうだね。藤堂くんは夏休みの予定は部活オンリー?」
私がそう聞くと、藤堂くんは首を横に振る。
「部活も楽しいけど、それだけじゃつまんないから。健人達と遊んだり家族旅行だったり、色々ある。苺谷さん達ももし良ければ合流して遊ぶ?」
そう聞かれ、私は迷わず頷いた。
「もちろん。またグループで連絡して」
「うん。それとさ……」
藤堂くんは若干緊張した様子になる。
「部活まで時間ある?」
「あるけど」
私がそう答えると、藤堂くんは安心したような表情になった。
「良かった。実は苺谷さんに見て欲しいものがあって」
「え? 何? 気になる」
「じゃあ帰る準備終わったらついて来て」
藤堂くんからそう言われて、私は急いで準備をする。
それから藤堂くんに連れて来られたのは、何の変哲もない空き教室。
「それで藤堂くん、見せたいものって何?」
「ごめん、苺谷さん。見せたいものっていうのは嘘。二人きりになる口実だったんだ」
「え?」
……どういうこと?
「実は苺谷さんに伝えたいことがあるんだ」
藤堂くんは真っ直ぐ私を見つめている。
その眼差しに、思わずドキリとしてしまう。
「俺さ、苺谷さんが好きなんだ」
藤堂くんの真っ直ぐな言葉。
「最初は話してて楽しいなって思った。でも、それだけじゃない。宿泊研修とか文化祭準備の時でトラブルが発生した時、真っ先に解決しようと動いたり、原田達がいじめられた時も真っ先に止めようとしたところが、カッコいいって思ったんだ」
照れたような表情の藤堂くん。
「だから、もし良ければ、俺と付き合ってください」
私の返事は決まっている。
「私も、藤堂くんが好き。こちらこそ、よろしくお願いします」
今の私は、きっと満面の笑みだと思う。
ずっと想い続けていた藤堂くんと両思いで、付き合うことになった。
それが嬉しくてたまらない。
「苺谷さん、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。じゃあ、これからよろしく。……姫花……ちゃん」
「姫花で良いよ。……俊介」
私は思い切って藤堂くん……俊介の名前を呼ぶ。
すると俊介は驚いたような顔になった。その後、しばらくして私の名前を呼んでくれた。
「姫花」
好きな人に呼ばれる名前がこんなに特別だなんて思いもしなかった。
これから夏休みが始まる。夏祭りもあるから、浴衣を着て俊介とデートをするのも良いかもしれない。夏休み中、サッカー部の練習試合があるって聞いていたから、私も吹奏楽部の休憩中その応援に行くのも良いかもしれない。もちろん、詩穂や一ノ瀬くん、それから碧先輩、春宮さん、財前さんと遊ぶのも良いかも。
私達のバラ色の青春は、まだまだこれからも続く。
また、財前さんが弁護士を呼んだ。それらのお陰でいじめ首謀者の西島さんや男子生徒達が炙り出され、見事に停学処分になった。
担任の先生も、西島さんを一方的に信じて財前さんを責めたことを謝ってくれた。
「苺谷さん、桐山さん、色々とありがとね」
「本当にこのご恩は忘れませんわ」
春宮さんと財前さんは嬉しそうだった。
「お礼を言われる程のことじゃないよ」
「姫花も私も人として当たり前のことをしただけだから」
面と向かってお礼を言われると何だか照れてしまう。
「麗奈も、ボイスレコーダーや弁護士呼んでくれたお陰で助かった」
「私はそんな」
春宮さんと財前さんの仲も以前より良くなっている気がした。
それに、彼女達二人は気が強い部分はあるけれど基本的に素直で良い子だった。
漫画のキャラとして見ていた自分が恥ずかしくなるくらいだ。
もっと早く彼女達と話していれば良かったかもと思ってしまった。
「苺谷さん、そっちも解決した?」
そこへ藤堂くんがやって来る。
一ノ瀬くんと原田くんもいる。
「うん。藤堂くん達は?」
「こっちもバッチリ」
藤堂くんはニッとはを見せて笑った。その笑顔はやはり爽やかである。
「良かった」
私はホッと安心する。
すると、原田くんが前に出て来る。
「その、春宮も財前も、色々と迷惑かけてごめん」
原田くんは春宮さんと財前さんに謝った。
「別に、もう良いよ」
「私もですわ」
三人のわだかまりは解けていたようだ。
ようやく全てが解決した。
「それとさ、苺谷、この後少し話せる?」
原田くんは恐る恐る私にそう聞いてきた。
今までの自分勝手な様子は感じられない。
私は頷く。
「うん、良いよ」
◇◇◇◇
中庭で、私は原田くんと二人きりになった。
「苺谷、本当に今まで色々とごめん。迷惑かけた」
原田くんはそう頭を下げた。
「うん、もう良いから」
「……俺さ、確かに調子に乗ってたかも。春宮と財前みたいな子に囲まれて、何か俺イケてるかもって。俺の時代が来たかもって。でも、周りに迷惑ばっかかけてたことにようやく気付いた」
原田くんは真摯で真っ直ぐな様子だった。
「原田くん、変わったね」
「ああ。目が覚めた。それでさ、俺、一学期が終わったらこの学校辞めることにした」
「え……?」
突然の情報に私は驚いてしまう。
ここはもう『俺バラ』とは違う世界だけど、『俺バラ』にこんな展開あったっけ?
「実は父さんが海外赴任することになって、俺もついて行くことにした」
「あ……」
そこで私は『俺バラ』の展開を思い出した。確かに私が読んでいた時、原田くんの父親が海外赴任になって転校になりそうなエピソードがあった。確かそれをヒロイン達が止めた気がする。そこで何とか原田くんの父親だけ単身赴任になる結末だった気がする。
「今までダメダメだったけど、俺、向こうで鍛え直そうと思う」
原田くんは覚悟を決めた表情だった。
だとしたら、私は背中を押すのみ。
「そっか。頑張ってね」
夏の風が中庭を吹き抜けた。
◇◇◇◇
それからは、本当の平穏が戻って来た。
私、藤堂くん、詩穂、一ノ瀬くんの四人は相変わらず。そこに時々春宮さんや財前さんが加わるようになった。
それから、私は詩穂、春宮さん、財前さんに碧先輩を紹介してみたりした。今では女子五人で集まって遊ぶこともある。と言っても、そろそろ期末テストがあるからほとんど勉強会になっているけれど。
その甲斐あって、期末テストは何と中間テストよりも点数が上がった。他のみんなも中間テストよりも順位が上がったみたい。良いことづくめだ。
そして、今日は終業式。明日から夏休みなので、一年二組の雰囲気は浮き足立っていた。
終業式が終わると、一気にみんな夏休みモードになった。遊びに行く予定を立てる子、勢い良く部活に向かう子など、様々だ。
「いよいよ夏休みだ」
藤堂くんは何かから解放されたような、晴れやかな表情だ。
「そうだね。藤堂くんは夏休みの予定は部活オンリー?」
私がそう聞くと、藤堂くんは首を横に振る。
「部活も楽しいけど、それだけじゃつまんないから。健人達と遊んだり家族旅行だったり、色々ある。苺谷さん達ももし良ければ合流して遊ぶ?」
そう聞かれ、私は迷わず頷いた。
「もちろん。またグループで連絡して」
「うん。それとさ……」
藤堂くんは若干緊張した様子になる。
「部活まで時間ある?」
「あるけど」
私がそう答えると、藤堂くんは安心したような表情になった。
「良かった。実は苺谷さんに見て欲しいものがあって」
「え? 何? 気になる」
「じゃあ帰る準備終わったらついて来て」
藤堂くんからそう言われて、私は急いで準備をする。
それから藤堂くんに連れて来られたのは、何の変哲もない空き教室。
「それで藤堂くん、見せたいものって何?」
「ごめん、苺谷さん。見せたいものっていうのは嘘。二人きりになる口実だったんだ」
「え?」
……どういうこと?
「実は苺谷さんに伝えたいことがあるんだ」
藤堂くんは真っ直ぐ私を見つめている。
その眼差しに、思わずドキリとしてしまう。
「俺さ、苺谷さんが好きなんだ」
藤堂くんの真っ直ぐな言葉。
「最初は話してて楽しいなって思った。でも、それだけじゃない。宿泊研修とか文化祭準備の時でトラブルが発生した時、真っ先に解決しようと動いたり、原田達がいじめられた時も真っ先に止めようとしたところが、カッコいいって思ったんだ」
照れたような表情の藤堂くん。
「だから、もし良ければ、俺と付き合ってください」
私の返事は決まっている。
「私も、藤堂くんが好き。こちらこそ、よろしくお願いします」
今の私は、きっと満面の笑みだと思う。
ずっと想い続けていた藤堂くんと両思いで、付き合うことになった。
それが嬉しくてたまらない。
「苺谷さん、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。じゃあ、これからよろしく。……姫花……ちゃん」
「姫花で良いよ。……俊介」
私は思い切って藤堂くん……俊介の名前を呼ぶ。
すると俊介は驚いたような顔になった。その後、しばらくして私の名前を呼んでくれた。
「姫花」
好きな人に呼ばれる名前がこんなに特別だなんて思いもしなかった。
これから夏休みが始まる。夏祭りもあるから、浴衣を着て俊介とデートをするのも良いかもしれない。夏休み中、サッカー部の練習試合があるって聞いていたから、私も吹奏楽部の休憩中その応援に行くのも良いかもしれない。もちろん、詩穂や一ノ瀬くん、それから碧先輩、春宮さん、財前さんと遊ぶのも良いかも。
私達のバラ色の青春は、まだまだこれからも続く。