君は恋に眠って

 踵を返し、改札をくぐり、振り返って手を振った。軽く手を挙げて応えた幼馴染に再び背を向け、歩き出す。


 「梅田 急行」の電車は幸いにも空いていて、座席にゆっくりと座り込んだ。なんとなくスマホを取り出し、一年前のアルバムを遡る。


 高校のときに撮った写真が、そこには連なっていた。どれもこれも、今でもはっきり覚えている。どんな時に撮ったのか、側に誰がいたのか、その誰かとどんな話をしていたのか。全部、全部、鬱陶しいくらいに覚えている。


 ただ、どれも、どこかセピア色。


 その事実には少しだけ寂しさが忍び寄るけれど、どこか安心できる気もした。スマホはポケットにしまい込み、腕を組んで、窓の外に目を遣る。



 きっと、こうして、俺達は忘れていく。


 忘れるなど思いもしなかった、忘れるはずがないと信じていた鮮やかなものを、少しずつ、少しずつ、俺達は、忘れていくのだろう。それが優しい色でも──哀しい色でも、その上に、新しい色を重ねて。


 苛烈な想いさえも、いつしか、想い出に褪色(たいしょく)させて。


 まるで恋をするように、褪色した想い出に耽る。





 ガタン、ガタン、と石橋を発つ電車の音が聞こえ始める。それを最後に、そっと目を閉じた。