絢は断られるのは承知の上だったのだろう。特にショックを受けた様子もなく、用意していたであろう代替案を提案する。
「じゃあ、お昼ご一緒してもよろしいですか? 新製品のことでご相談が」
「手短にお願いします」
彼は淡々と言い、テーブルに向かっていく。周囲にいる社員たちが、颯爽と歩く彼に自然と道を開けて会釈しているのを尻目に、絢の分の包み焼きを完成させた。
「はい、お待たせ」
「あーあ、やっぱりクリスマスイブは無理か」
ため息混じりにぼやく絢は、やっと私と話す気になったようなので、一応けん制してみる。
「社長を狙うのはやめておいたほうがいいんじゃない?」
「高難度なのは百も承知よ。でも食事会ってことは、たぶん仕事でしょ? まだチャンスはあるわね」
とっても前向きでバイタリティのある彼女は、ふふんと口角を上げてトレーを手にする。意気揚々と社長がいるテーブルへ向かっていく彼女に私もため息をつきつつ、次の人のオーダーを取り始めた。
絢はデキる女というだけでなく、〝あの八影社長を射止められるのでは!?〟と噂されている。そして彼女自身もそう強く願っているのだから、今夜の食事会の相手が私だなんて言えるわけがない。
──社員の皆さんはまだ知らない。超絶やり手な冷徹社長と、しがない調理員の私が、実は新婚夫婦だということを。
「じゃあ、お昼ご一緒してもよろしいですか? 新製品のことでご相談が」
「手短にお願いします」
彼は淡々と言い、テーブルに向かっていく。周囲にいる社員たちが、颯爽と歩く彼に自然と道を開けて会釈しているのを尻目に、絢の分の包み焼きを完成させた。
「はい、お待たせ」
「あーあ、やっぱりクリスマスイブは無理か」
ため息混じりにぼやく絢は、やっと私と話す気になったようなので、一応けん制してみる。
「社長を狙うのはやめておいたほうがいいんじゃない?」
「高難度なのは百も承知よ。でも食事会ってことは、たぶん仕事でしょ? まだチャンスはあるわね」
とっても前向きでバイタリティのある彼女は、ふふんと口角を上げてトレーを手にする。意気揚々と社長がいるテーブルへ向かっていく彼女に私もため息をつきつつ、次の人のオーダーを取り始めた。
絢はデキる女というだけでなく、〝あの八影社長を射止められるのでは!?〟と噂されている。そして彼女自身もそう強く願っているのだから、今夜の食事会の相手が私だなんて言えるわけがない。
──社員の皆さんはまだ知らない。超絶やり手な冷徹社長と、しがない調理員の私が、実は新婚夫婦だということを。



