冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

 その過去を話す彼の表情は浮かないもので、後悔や罪悪感は今も消えていないのだとわかる。彼を励まそうと『今回の機器も、将来たくさんの人のためになるはず』と言った時、少し影のある表情をしていたのもきっとそのせいだったのだ。

 でも、あの人工血管のおかげで助かった人間は確かにここにいる。

「私は今自分の足で歩いていて、なんの支障もなく生活できてる。それは桐人さんが手術できるように頼み込んでくれたことと、蘭先生が成功させてくれたおかげなのは間違いありません。本当にありがとうございます」

 心から感謝して頭を下げると、桐人さんは口元を緩めた。今回は純粋に嬉しそうに。

 そして、先ほど先生から聞いた私の治療について教えてくれる。

「今回の治療にシェーレの新薬を使ってもらえることになったよ。これまでと比べて副作用が出づらいもので、すでに承認もされている」
「本当ですか? 嬉しい! ……けど、新薬って例のステロイド薬ですよね。もう完成したんですか?」
「研究を始めてから六年経ってるよ。これでも早いほうだが」

 クスッと笑う彼に、私は驚いて「あの頃から!?」と声をあげてしまった。