冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

 秋華を助けたい気持ちはもちろん強かったが、彼女だから特別というわけではない。どんな患者であれ、救える可能性があるなら精一杯対応する。

 俺はさっそく秋華の主治医である蘭先生にアポを取って話をした。しかし、彼女の病気に人工血管を使用した例はなかったため、彼は難色を示しすぐには承諾してもらえなかった。

『もし不具合が起きれば合併症を起こすかもしれない。まだ試験段階の人工血管を使うのは危険すぎます』
『これまで重篤な事故は起きていません。これを使わない限り、彼女の足を救う手立てはないのでしょう』

 そんな意見を何度も言い合い、俺はこれまでの試験データを掻き集めて説得し続けた。最終的に『秋華ちゃん本人とご家族がそれでいいとおっしゃるなら』と、蘭先生が折れた形になった。

 そうして治験コーディネーターにメリットとデメリットをすべてきちんと説明してもらい、秋華は臨床試験を受けるほうを選んだ。

 いつできるかわからない手術を待つより、早く治る可能性に賭けたほうがいい。俺もそう信じて疑わなかったし、人工血管の質の高さには自信もあった。

 蘭先生の手腕は確かで、バイパス手術は無事に成功。術後三カ月ほどは注意が必要だったが、感染症も起こらず経過は順調で、秋華の脚と体調はみるみる回復した。