「認知症の方が嘘をつくことはありますが、なくなった記憶を想像で埋め合わせようとしたり、忘れていることをごまかしたりすることが多い。娘さんの悪事を明かすようなことはないはずです。むしろあなたを庇おうとするでしょう」
父親の認知症までも利用しようとするとは、なんて意地汚いのか。ご両親にも問題はあるが、元々の彼女の人間性を疑ってしまう。
いい加減に過ちを認めろと、心の中で念じながら鋭い視線を向け続ける。
「ご両親が真実を隠していたのは、大事な娘の頼みだったからです。心優しいご両親を、あなたは利用したままでいいのですか?」
心に訴えかけるように言うと、絢さんは目を見張る。そのうち抗う気力を失ったように肩を落とし、近くの椅子にへなへなと腰を下ろした。
「……ずっと悔しかったんです。秋華が社長に愛されていることも、あの子に固執してしまうことも」
うなだれてぽつりぽつりと話し始めるので、俺は立ったまま耳を傾ける。
「これまで手に入れられないものはなかったし、誰より私が一番でありたいと思っていました。だから、結婚の事実を知った時はどん底に落とされた気分だったし、ストーカーまがいのことをしていた自分も、社長に軽蔑されてしまった自分も心底嫌で……。その恨みが、秋華へ向くようになっていました」
「それで私の同情を買い、秋華を貶めようとしたのですね?」
父親の認知症までも利用しようとするとは、なんて意地汚いのか。ご両親にも問題はあるが、元々の彼女の人間性を疑ってしまう。
いい加減に過ちを認めろと、心の中で念じながら鋭い視線を向け続ける。
「ご両親が真実を隠していたのは、大事な娘の頼みだったからです。心優しいご両親を、あなたは利用したままでいいのですか?」
心に訴えかけるように言うと、絢さんは目を見張る。そのうち抗う気力を失ったように肩を落とし、近くの椅子にへなへなと腰を下ろした。
「……ずっと悔しかったんです。秋華が社長に愛されていることも、あの子に固執してしまうことも」
うなだれてぽつりぽつりと話し始めるので、俺は立ったまま耳を傾ける。
「これまで手に入れられないものはなかったし、誰より私が一番でありたいと思っていました。だから、結婚の事実を知った時はどん底に落とされた気分だったし、ストーカーまがいのことをしていた自分も、社長に軽蔑されてしまった自分も心底嫌で……。その恨みが、秋華へ向くようになっていました」
「それで私の同情を買い、秋華を貶めようとしたのですね?」



