冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

「白藍ではうちの製品をたくさん使っていただいてますし、臨床試験でもお世話になっていますから」
「シェーレの製品は質が高いからね。八影さんがゴリ押しするだけありますよ。引くくらい熱心に」
「そのわりに、系列病院のほうではあまり発注してくださらなかった気が」
「気のせい気のせい」

 表情筋を動かさない桐人さんに対し、蘭先生はへらりと笑って軽く流している。お互い言葉の端々に嫌みっぽさが滲んでいるけれど、テンポがよくて息が合っているようにも感じる。

 これは犬猿の仲ってやつだろうか。なんとなく直感して、ふたりの間になにがあったのか気になりつつも、当たり障りのない返しをしておく。

「じゃあ、蘭先生が戻ってきたことで、これからまたお仕事で関わるようになりそうですね」
「そうだね。秋華ちゃんも、体調面でなにか気になることが出てきたらいつでも声かけて。いくら医療に詳しい旦那様でも、診察はできないだろうし」

 蘭先生のまたしても嫌みなひと言に、桐人さんの眉がぴくりと上がった。今のは天然なのか、はたまた確信犯か。

「携帯に電話くれてもいいからね。番号、昔と変わってないから」
「わかりました。ありがとうございます」

 ひとまず笑顔で頷いた直後、隣から冷ややかなオーラを感じてぎくりとした。