冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

「ご無沙汰してます! 先生、その様子だと夜勤中ですか? 系列病院に異動したはずなのに、なんでここに……」
「そうそう、つい最近戻ってきたんだよ。秋華ちゃんに会いたくて」

 瞳を覗き込まれると同時に甘いひと言が飛び出して一瞬固まるも、彼はすぐにいたずらっぽく笑う。

「って言うと気持ち悪いから、大人の事情ってことにしておくよ」

 軽い調子で言う彼に、私も呆れて笑いながら「そういうとこ、変わってませんね」と茶化した。

 そうだ、蘭先生はぽんぽんと甘い言葉を口にする人だった。女性経験が豊富なのは間違いないが、チャラいというより余裕を漂わせる手練れの男という感じで、それに落ちる女性が結婚前は後を絶たなかったのだとか。

 でも外科医としての腕は確かだと、私は身をもって知っているので当時から信頼している。そんな先生は少し身を屈め、心配そうに私を見つめる。

「あれから症状は出てない? 今日はどうしたの?」
「あはは、ちょっとドジをしちゃいまして。軽い捻挫でした。体調のほうも大丈夫ですよ」
「それならよかった」

 ほっとした様子の彼は、ふとなにかを見下ろして固まった。凝視しているその先に目をやると、私の左手薬指に輝く宝石がある。