冷酷社長な旦那様が「君のためなら死ねる」と言い出しました~ヤンデレ御曹司の激重愛~

「重症じゃなくてよかった。テーピングは俺も巻けるから、毎日やってあげる」
「ありがとうございます」

 さっき巻き方を教えてもらったから自分でもできるけれど、桐人さんがとても看病したそうにしているので、あえて黙っておく。それに、不慣れな私より彼のほうがきっと上手だろう。

 彼に会計をお願いして待合の椅子に座っていると、最低限の明かりが灯る廊下の向こうから白衣を着たひとりの男性が歩いてくる。

 桐人さんと同じくらいの背丈で、緩くうねるアンニュイな髪が大人っぽいその人の顔がはっきり見えた瞬間、お互いに目を見開いた。

「あれっ……秋華ちゃん?」
(あららぎ)先生!?」

 約四年ぶりに会った命の恩人に、捻挫を忘れて勢いよく立ち上がりそうになった。彼は私の病気を見抜き、治療してくれた血管外科のドクターなのだ。

 現在三十六歳の彼は、以前はなかった髭を整えていてワイルドなイケメンになっている。しかし愛嬌のある笑顔は変わらず、「久しぶり」と嬉しそうに軽く手を振ってこちらにやってきた。

 でも、蘭先生はここから去ってしまったはずだった。結婚して、奥様がいる地域の病院に異動願いを出したらしいと、親しかった看護師さんから聞いていたのに。